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“胃酸”は胃の痛みの重要な原因の一つ

「胃の痛み」の症状・原因・薬による
対処法・予防法について解説します。

監修 木下 芳一 先生

兵庫県立はりま姫路総合医療センター 院長

胃の痛みの症状

胃のあたり(腹部の左右の真ん中あたりで、おへそより上の部分)に痛みが起こります。この部分に胃があると皆さんが思われるので、この部分の痛みを「胃の痛み」とよく表現するわけです。でも、本当は胃の位置はもう少し上であることが多いのです。

皆さんが胃のあたりと思われている場所には、胃、十二指腸、小腸、大腸(横行結腸)、肝臓、膵臓、大動脈、背骨などたくさんの臓器があります。これらのどの臓器の異常でも「胃の痛み」が起こることになります。 また、胃のあたりには腹部の神経が集まる場所があり、お腹のどこに不調があっても私たちは「胃の痛み」として感じてしまうことがあります。

虫垂炎(よく盲腸炎と表現されます)が起こってすぐは「胃の痛み」や胃の不快感、吐き気などを感じ、半日ほどしてから虫垂がある右の下腹部へと痛みが移動していくことはよく知られています。実は、いろいろな病気で「胃の痛み」が起こるのです。

「胃の痛み」は大きく2つに分けることができます。1つ目は痛みが「締め付けるよう」と表現される痛みで、痛みが強くなったり弱くなったりします。疝痛(せんつう)と分類されますが、多くは胃、十二指腸、胆嚢など、筋肉で包まれ中が空洞の形をした臓器が強く収縮して起こる痛みです。この強い収縮が胃で起こった場合は胃痙攣(いけいれん)とも呼ばれます。 急に起こることも多いです。子宮が収縮する陣痛と同じような痛みです。2つ目は痛みがゆっくりと起こりだんだん強くなり同じ強さが持続する痛みです。多くは内臓の炎症などで起こります。

また、「胃の痛み」が起こるきっかけや痛みが改善する要因もいろいろです。胃潰瘍の場合には食事をすると痛みが強くなることが多いです。一方、十二指腸潰瘍ですと夜間や空腹時に痛みが強くなり、牛乳を飲んだり食事をすると痛みが軽くなります。これは胃酸が十二指腸に流れ込む前に牛乳や食べ物で中和されるからだと考えられています。

「胃の痛み」はいろいろな原因で起こります。市販薬を服用しても効果が得られず、痛みが強い場合には緊急で手術などの治療をしないといけない場合もまれではありません。痛みが強いときには診療所や病院を受診するのがよいと思います。実際、皆さんの受診行動を調べてみると、「胃の痛み」は胃の症状の中で、最も医療機関への受診きっかけとなりやすい症状であり、多くの方は「胃の症状」を正しく判断して医療機関を受診されているようです。

胃の痛みの原因

※イメージ図

「胃の痛み」の原因は、痛みを起こしている臓器によってさまざまです。胃や胆嚢の痙攣性収縮で起こる疝痛では、胃や胆嚢の中の圧が高くなったり、胃や胆嚢の壁への血液の流れが少なくなったりして痛みが起こっていると考えられています。膵炎では炎症の結果作られる発痛物質が神経を刺激して持続的な痛みを起こします。腹部にがんがあっても持続的な痛みが起こることがあります。

胃に胃酸が十分にある方が痛み止めや熱さましとして使用される消炎鎮痛薬を使用したときや、血液をサラサラにするアスピリンを使用したときに胃や十二指腸に潰瘍ができて「胃の痛み」が起こることがあります。胃酸が十二指腸に流れ込んで起こる「胃もたれ」症状とともに「胃の痛み」症状が起こることもあります。

胃酸は「胃の痛み」の重要な原因の一つですが、「胃の痛み」の原因となる病気は実にさまざまであり、原因を明らかにするには内視鏡検査を含む精密検査が必要になります。

胃の痛みの薬による対処法

「胃の痛み」の原因は多様ですので、自分で実施することができる薬を用いた治療は限定的なものです。胃酸分泌抑制薬であるPPI(ピーピーアイ)を飲んでみて2~3日で痛みが軽くなれば胃酸が原因となっている胃や十二指腸潰瘍などの病気の可能性が強くなります。

ただし、判断は難しいので、痛みが強い場合や持続する場合、繰り返す場合は診療所や病院を受診してください。PPIを使用して痛みがなくなっても、使用をやめると再度痛みが起こる場合には医療機関を受診してください。

胃の痛みの予防法

「胃の痛み」は胃の病気を示している症状ではなく、腹部のどの臓器の異常でも起こりうる症状です。このため、生活習慣を整えて「胃の痛み」を予防することはなかなか難しいかもしれません。

  • ・暴飲暴食を避けて胃酸分泌が起こりすぎないようにする
  • ・むやみに痛み止めや熱さましの消炎鎮痛薬を使用し続けないように注意して、かかりつけの医師と相談して使用する
  • ・定期検診を受ける

などはされた方がよいと思います。

<参考資料>

  • 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021
  • 機能性ディスペプシア(FD)診療ガイドライン2021
  • 消化性潰瘍診療ガイドライン2020

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