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「胃もたれ」の症状・原因・薬による
対処法・予防法について解説します。

兵庫県立はりま姫路総合医療センター 院長
胃もたれの症状

「胃もたれ」とは胃のあたりが重く、苦しい症状で食後に起こりやすい症状です。胃が重くなるため、食欲もないことが多いです。
胃もたれの原因:胃酸が関係

※イメージ図
胃が重く、食後に起こりやすいため、食べたものが胃の中でうまく消化できずにずっと胃に留まって起こる症状が「胃もたれ」だと永く信じられてきました。ところが、「胃もたれ」症状の一部は確かに胃に食べ物が長時間残ることが原因となって起こるのですが、大部分の「胃もたれ」症状の原因は別にあることがわかってきました。重要な原因の一つが実は胃酸なのです。
実際の実験でも、 胃の粘膜に内視鏡から胃酸と同じ濃度の酸を振りかけても症状は起こりません。ところが、十二指腸の粘膜に酸を振りかけると「胃もたれ」症状が起こるのです。胃の中にたくさん胃酸が出てきて、この胃酸が十二指腸にたくさん一度に流れ込むと「胃もたれ」が起こるのです。また、脂肪分を十二指腸に流し込むと「胃もたれ」症状が起こりやすくなることもわかってきました。
「胃もたれ」の原因は以前から考えられていた消化不良や胃の動きの低下で起こることはむしろまれで、今では、たくさんの胃酸が十二指腸に流れ込んで起こることの方が多いと考えられています。
胃酸が原因で「胃もたれ」症状が起こるときに、心配ごとがあったり、不安を感じていたり、さまざまなストレスがあると胃酸で起こった症状を私たちはより強く、より不快な症状として感じやすくなることもわかっています。胃酸とストレスの共同作業によって、「胃もたれ」症状はより強まるようです。
胃もたれの薬による対処法
胃酸が原因になっていることが多いわけですから、胃酸を減らす薬を使用すると症状が軽くなる方が多いです。
胃潰瘍などがないのに「胃もたれ」症状を起こす病気に機能性ディスペプシアがあります。以前、この病気は胃炎や神経性胃炎、胃下垂などと言われていました。機能性ディスペプシア患者さんの治療の標準を示した診療ガイドラインが消化器病学会によって作られています。このガイドラインでも、胃酸を減らすPPI(ピーピーアイ)は一番最初に使用する薬として位置づけられています。
「胃もたれ」症状は薬を使用しても、「胸やけ」症状と比べて良くなるのに少し時間がかかります。2週間服用しても症状が残る場合には、他の病気の可能性も考えられますので、医療機関を受診しましょう。
胃もたれの予防法
脂っこいものを食べすぎたり、一度にたくさん食べると胃酸が多く出ますので、これが原因となって「胃もたれ」症状が起こりやすくなります。暴飲暴食は控えてください。
以前はトウガラシなどの刺激物を避けてくださいと説明されていたと思いますが、トウガラシは適度な量なら食べても構いません。トウガラシの辛み成分は胃や十二指腸粘膜の血液の流れを良くしますのでこれが「胃もたれ」の改善に関係しているのかもしれません。ストレスがあるときほど、ストレス発散のために激辛料理などを食べてしまうかもしれませんが、ほどほどにしましょう。
不安や心配ごと、ストレスをできるだけ減らすことも大切ですね。結婚式でスピーチを頼まれるとスピーチの前は胃が重くて食事が食べられなくても、スピーチ終了後には急に食事がおいしく感じられた経験をお持ちの方も少なくないと思います。
<参考資料>
- 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021
- 機能性ディスペプシア(FD)診療ガイドライン2021
- 消化性潰瘍診療ガイドライン2020