あなたが感じている胃の症状
実は“胃酸”が関係しているかも?

兵庫県立はりま姫路総合医療センター 院長
あなたが感じている胃の症状
実は“胃酸”が関係しているかも?
兵庫県立はりま姫路総合医療センター 院長
胃のあたり(腹部の左右の真ん中あたりで、おへそより上の部分)にはいろいろな症状が起こります。胸の下の方が熱くなる「胸やけ」、重苦しく感じる症状が続く「胃もたれ」、キリキリあるいはズキズキした「胃の痛み」が主なものです。
これらの症状は実は一つずつ区別をすることが難しいこともあり、一緒に、あるいは時間差で起こってくることもあります。
これらの症状が起こると、すぐに診療所や病院に行くほどではなくても、症状がつらくて仕事に身が入らなかったり、食事を楽しめないことが多いものです。日常生活でよく起こる症状ですが、とても困った症状です。
これらの「胃の症状」が起こる原因はさまざまで、内視鏡検査など詳しい検査をしないと原因を突き止めることが難しい場合もありますが、強い胃酸の存在が症状出現の原因の一つであることがわかっています。
「胸やけ」「胃もたれ」「胃の痛み」など、症状は違っても原因には胃酸の存在が関わっているのです。
胃酸のように酸度が高い液体が存在する場所は体の中には少なく、胃とその隣にある食道や十二指腸は強い酸性の胃液にさらされる特殊な場所です。
胃酸は食べ物のなかの菌を殺菌したり、鉄やカルシウムの吸収に大切な役割を有しているのですが、時に不快な症状を起こしてしまいます。「胃の症状」と私たちが感じている「胸やけ」「胃もたれ」「胃の痛み」は、実は胃以外に食道や十二指腸から起こっていることもあるのです。
症状だけからどこの部位でトラブルが起こっているのか区別をすることは難しく、胃、食道、十二指腸の症状は同じように感じられることが少なくありません。
※イメージ図
「胸やけ」「胃もたれ」「胃の痛み」の症状は一緒にあるいは順番に起こることもあり、起こる原因にも胃酸という共通点はあるのですが、それぞれの症状によって特徴もあります。
「胸やけ」症状は胃酸の関与が最も強い症状です。この症状があれば胃酸が症状を引き起こしている可能性はかなり高くなります。
「胃もたれ」症状の原因はたくさんあるのですが胃酸は最大の原因の一つであると考えられています。
一方、「胃の痛み」はさまざまな病気で起こる症状で、胃酸が原因である場合もない場合もあります。
また、「胸やけ」「胃もたれ」「胃の痛み」などの「胃の症状」は、程度の差はあれど、ストレスや不安、不快感などがあるときには、症状をより強く感じてしまうようです。ストレスや不安は神経の敏感さを高め刺激を強く感じたり、それを脳で処理するときに不愉快な刺激として認識されやすくするようです。
古くから胃や腸と脳は関係が強いことが知られていました。感情をお腹の症状で表現することもよくあり、皆さんもすごく心配なときに「胃が痛くなる」、すごく不愉快なときに「吐きそう」などとつい言ってしまうことがあるのではないでしょうか 。
不快な胃の症状の原因はさまざまですが、胃酸の存在が大きいことは確実です。そこで、症状が起こって困るときには、とりあえず胃酸を減らす薬を飲むと症状がなくなったり和らぐことが多いのです。胃酸を減らす薬は胃薬と言って昔からいろいろな種類が作られてきました。 現在も医療現場において 、効果が高く、いろいろな年齢の方に広く使用されている胃酸を減らす薬はプロトンポンプ阻害薬という薬です。この薬はPPI(ピーピーアイ)とも呼ばれています。
PPIは胃酸の分泌を強力に抑える薬ですので、1~2週間飲んでも症状が続く場合や中止すると症状が再発する場合には、何か困った他の原因で症状が起こっていることがあります。例えば胃がんでも同じような胃の症状が起こることがあります。症状が続く場合や再発したときは診療所や病院を受診して相談していただくことが大切です。
すぐに効果が出ますが、効果の持続が短く1日に何度も飲む必要があります。
即効性があり、毎日服用すると効きが悪くなる傾向があるとされています。
夜間の胃酸分泌に対して効果が見られやすく、昼間食後の胃酸を抑える働きが弱いとされています。
昼間食後の胃酸を押さえる働きは強いですが、夜間の胃酸分泌抑制作用が十分でないとされています。
高齢者※も使用しやすいです。
効果が安定するのに1~2日かかります。
胃の症状は食べすぎたとき、脂っこいものを食べたときに起こりやすいことがわかっています。食べすぎや脂っこい食事は胃酸の分泌を増やしますので、胃の症状が出やすくなるのではないかと考えられています。やはり、暴飲暴食は避け規則正しい食生活を心がけた方が良いと思います。
次に、胃の症状3つ「胸やけ」「胃もたれ」「胃の痛み」を詳しく解説します。
<参考資料>